目的
この記事では、ハイネボレル性とボルツァーノ-ワイエルシュトラス性が同値であることを証明することを目的とする。
補題1: 有向点族の cluster point には、そこへ収束する部分有向点族が存在する
今、位相空間 (X,O) があって、ある有向点族 (xλ)λ∈Λ が cluster point y∈X を持つとする。 P::={(λ,B)∣xλ∈B∧y∈B∧B∈O} に対して、 (λ1,B1)≤(λ2,B2) を λ1≤λ2∧B1⊃B2 と定義する。 今、 (λ1,B1),(λ2,B2)∈P が与えられた時、 λ1,λ2∈Λ より、 ∃λ3∈Λ.λ1≤λ3∧λ2≤λ3. y は cluster point だから、 ∃λ4∈Λ,B4∈O.λ3≤λ4∧xλ4∈B4∧y∈B4. このとき、 (λ4,B1∩B2∩B4)∈P となる。よって、 P は定義した ≤ の下、有向集合となる。
このとき、 h:P→Λ を (λ,B)↦λ と定義することで、 (xh(p))p∈P は y に収束する部分有向点族となる。
証明
(⟹) 今、位相空間 (X,O) があって、ハイネボレル性を満たすとする。ある有向点族 (xα)α∈Λ が与えられたとき、これが収束する部分有向点族を持つことを示す。
今、 X 上の閉集合族 F に対して、その任意の有限部分集合族 F′ が ∩F′=ϕ を満たすとき、 ∩F=ϕ である。
何故ならば、もし ∩F=ϕ であったならば、そのそれぞれの補集合をとって集めた開集合族は開被覆となり、ハイネボレルにより有限部分集合であって開被覆であるものが存在することになるが、これは ∩F′=ϕ の条件と矛盾する。
今、 Sα::={xβ∣α≤β} と定義し、その閉包を Sαˉ とする。
集合族 {Sαˉ}α∈Λ は閉集合族であって、その有限部分集合族は空ではない。(添字たちのすべてに対して、それらと同じかもしくは大きい有向集合の要素 γ が存在して、 Sγˉ が空ではないため)
よって、前段落の結果より、 ∩α{Sαˉ}=ϕ が成立する。
閉包の定義により、これは (xα)α∈Λ の堆積点(cluster point)の集合である。
補題1により、有向点族の cluster point には、そこへ収束する部分有向点族が存在するので、ボルツァーノワイエルシュトラス性が示された。
(⟸) ボルツァーノワイエルシュトラス性が成立するとき、ハイネボレル性が成り立つことを証明する。
今、ハイネボレル性が成り立たないと仮定すると、ある開被覆 {Ui}i∈I が存在して、それに対する任意の有限部分集合は X を被覆しない。
開被覆の {Ui}i∈I 添字集合の、有限部分集合全体を D とする。
すなわち、
D::={J∣J⊂I∧∣J∣<∞}.
このとき、 C1,C2∈D に対して、 C1≤C2 を C1⊂C2 で定義する。
この定義のもと、 D は有向集合となる。
今、 ∀C∈D に対して、 ∪{Ui}i∈C は X を被覆しないので、 ∃xC∈X.∀c∈C.xC∈/Uc.
これらを集めて有向点族 (xC)C∈D を考えると、ボルツァーノワイエルシュトラス性により、これは収束する部分有向点族 (xC′)C′∈D′を持つ。
その収束先を a とする。
今、 {Ui}i∈I は開被覆であったため、ある c∈I が存在して、a∈Uc が成立する。
このとき、 {c}∈D であって、また (xC′)C′∈D′ は cofinal であるため、ある C′′∈D′ が存在して、 {c}⊂C′′ が成立する。
a は収束点なので、 ∃C′′′∈D′,C′′≤C′′′∧xC′′′∈Uc.
ところで、 c∈C′′′ より、 (xC)C∈D の定義から、 xC′′′∈/Uc.
よって矛盾。
以上より、ボルツァーノワイエルシュトラス性が成立するとき、ハイネボレル性も成立する。